要点まとめ
料金は周りの相場に合わせず、「月に手元に残したい金額 ÷ 無理なく販売できるレッスン数」で1回あたりの最低手取り額を逆算します。
表向きの提示価格、プランの実際の手取り額、本当の時給は別物です。分けて見ないと、埋まっているのにお金が残らない状態に陥ります。
本記事の目次
レッスンの料金は、どう決めるべきでしょうか? 周りの相場に合わせて決めるのはおすすめできません。「月に手元に残したい金額 ÷ 無理なく販売できるレッスン数」で1回あたりの最低手取り額を逆算し、そこに場所代、手数料、準備時間、移動時間、急なキャンセルのリスクを上乗せしていきます。
活動を始めたばかりのフリーランスコーチ、パーソナルトレーナー、副業講師がまず気にするのは、こんな点ではないでしょうか。
「近隣のトレーナーは、1回いくらで教えているんだろう?」
相場を調べるのは良いスタートです。しかし「周りが 1,500 NT$ だから自分も」という理由だけで決めると、数か月後に壁にぶつかります。スケジュールは埋まっているのに、生活費と経費を払うと手元に残らないという状態です。
なぜ埋まっているのに稼げないのか。プロの仕事時間は「指導している60分」だけではないからです。裏側には、レッスン準備、メニュー作成、指導記録、メッセージ返信、移動、日程調整と事務作業、場所代と手数料、避けられない当日キャンセルや振替対応が隠れています。
この記事では「相場は〇〇円が正解」という結論は出しません。目標収入、生活費、働ける時間、サポート内容は人それぞれだからです。お伝えするのは、誰でも自分の状況で計算できる方法です。目標月収とリアルなコストから、下回ってはいけない手取り底値を出し、そこから提示価格を決めるという流れです。
まず理解しておきたい「3つの価格」
料金を考える前に、混同しやすい3つの価格を切り離しておくと、収支の現実が見えてきます。
| 価格の概念 | 定義と含まれる範囲 | よくある誤解や落とし穴 |
|---|---|---|
| 表向きの提示価格 | 料金表やSNS、募集ページに記載されている1回あたりの表示価格。 | 「1回 1,500 NT$ と書いてあるから、1回教えれば 1,500 NT$ まるまる儲かる」と思い込む。 |
| プランの実際の手取り額 | 特典レッスン、割引、プラットフォーム手数料、決済手数料などを引いた後の、レッスン1回あたりの実質受取額。 | 「10回購入で1回プレゼント」や手数料を考慮しておらず、実際の手取りが想定より大幅に低くなる。 |
| 本当の時給(実質時給) | 指導時間に加えて、準備・移動・事務作業・アフターフォローにかかった全時間を合計して割り出した本当の時給。 | 指導時間の「60分」だけで時給を計算してしまい、自分の時間の対価を大幅に過大評価してしまう。 |
1. 表向きの提示価格
生徒さんが料金表やウェブサイト、DMで目にする金額です。体験レッスン(単発)1,500 NT$、ベーシックプラン(8回)1回あたり 1,350 NT$、アドバンスプラン(12回)1回あたり 1,200 NT$ といった表示がこれにあたります。
役割はサービスの価値とポジションを伝えること。そのまま手元に残る金額ではありません。
2. プランの実際の手取り額
割引や手数料を差し引いた後、1回あたりで実際に残る金額です。考慮する項目は次の6つです。
- プランに含まれる無料プレゼントのレッスン枠(おまけも時間を割いて教えるコストです)
- 早期割引やペア割などの値引き額
- 予約プラットフォームやマッチングサイトの手数料
- クレジットカード決済や分割払いの手数料
- 無料カウンセリングや体験測定に費やした時間コスト
- プランに付属する教材や消耗品の費用
提示価格が高く見えても、手数料や無料特典分を引くと、1回あたりの実質手取りは15%〜30%ほど目減りします。
3. 本当の時給(実質時給)
レッスン1回に費やした総労働時間で手取り額を割った数字です。指導中の1時間だけを見てはいけません。
- 実際の指導時間:60分
- 前後の準備と片付け:前後各15分(計30分)
- スタジオや生徒宅への往復移動:30分
- レッスン後の記録更新やチャット返信:15分
表面上は「60分のレッスン」でも、実際には合計135分(2.25時間)を使っています。実質手取りが 1,125 NT$ なら実質時給は 500 NT$。60分だけで計算すると、「忙しいのにお金が残らない」状態にはまります。
レッスン料金の計算方法:目標月収から逆算する2つのステップ
現実的な2つのステップで逆算していきます。
ステップ1:毎月回収しなければならない総額を出す
毎月の必要回収額 = 目標の手取り月収 + 毎月の固定費 + 毎月の変動費 + 税金・リスク予備費
この4つは、どれも欠かせません。
- 目標の手取り月収
仕事経費を差し引いた後、生活費や貯蓄として残したい純粋な金額。
- 毎月の固定費
教える回数に関係なく発生する費用(スタジオ家賃、管理ツールの月額費、通信費、事務雑費など)。
- 毎月の変動費
レッスン回数に応じて増える費用(都度払いの場所代、交通費、決済手数料、教材費など)。
- 税金・リスク予備費
税金、機材の買い替え、閑散期対策、急なキャンセルや休会、自身の体調不良や研修への備え。
「毎日満席でキャンセルゼロ」の前提で組むと魅力的な価格はつけられますが、予定が少し狂うだけで資金繰りが苦しくなります。
ステップ2:1回あたりの最低手取り額を出す
1回あたりの最低手取り額 = 毎月の必要回収額 ÷ 毎月無理なく販売できるレッスン数
重要なのは「無理なく販売できるレッスン数」です。起きている時間を限界まで詰めたり、最大キャパに4週を掛けたりしてはいけません。総労働時間から次の時間を差し引きます。
- レッスン準備、指導計画の作成、指導記録の整理
- 教室や生徒さんの自宅への移動
- 連絡返信、日程調整、事務作業
- 避けられないキャンセルや空きコマ
- 休日、身体の休養、勉強時間
- SNS発信や集客・広報活動
これらを引いて残った枠が、健康を損なわずに提供し続けられる「無理のない販売可能レッスン数」です。
シミュレーション例で計算してみよう
※以下は計算の流れを示すサンプルで、特定のジャンルや相場を示すものではありません。あるフリーランスのパーソナルトレーナーが、月々の収支を次のように計画したとします。
- 個人収入・生活費
手元に残したいのは毎月 60,000 NT$。
- 固定費・変動費
合計 20,000 NT$。レンタルジム代、交通費、ツール利用料など。
- 税金・閑散期への備え・研修費
10,000 NT$ を確保。
- 無理のない月間レッスン枠
準備や移動時間を考慮して 80回。週20回ペース。
- 毎月の必要回収額
60,000 NT$ + 20,000 NT$ + 10,000 NT$ = 90,000 NT$
- 1回あたりの最低手取り額
90,000 NT$ ÷ 80回 = 1,125 NT$
つまり週20回教える場合、諸経費を引いた実質手取りで1回につき最低 1,125 NT$ を確保しなければ、目標月収の 60,000 NT$ には届きません。
提示価格そのものは、指導経験やサポートの手厚さ、場所のグレードに合わせて 1,500 NT$、1,800 NT$、2,200 NT$ でかまいません。大切なのは、割引を打つ前に手取り底値を把握しておくこと。安易な値下げで赤字になる失敗を防げます。
目標収入、コスト、販売可能回数を入力して、1回あたりの手取り底値をチェック。単価シミュレーションツールを使ってみる
「教えられる回数」と「売っていい回数」は違う
フリーランスになりたての頃は、カレンダーの空き時間をそのまま収入として計算してしまいがちです。
「平日月曜から金曜まで毎日6コマ教えれば、月120回もレッスンができる!」
この考え方には体力の限界と、教える以外の業務時間が抜け落ちています。現実的な1週間(40時間)の内訳を見てみましょう。
| 業務内容 | 1週間の時間目安 | 生徒に直接請求できるか | 価格や時間への影響 |
|---|---|---|---|
| 実際のレッスン指導 | 20時間 | できる | 売上を直接生み出すメインの時間。 |
| 準備とカルテ整理 | 5時間 | 通常はプラン料金に含む | 一人ひとりに合わせたメニュー調整。指導品質に直結する。 |
| 移動とスタジオ間の移動 | 4時間 | 原則請求できない | 移動時間は隠れた労働。集中力と体力を消費する。 |
| メッセージ返信・日程調整 | 3時間 | 原則請求できない | 相談対応、振替連絡、受講回数の確認にかかる時間。 |
| 集客・事務・自己研鑽・休養 | 8時間 | 請求できない | スキルアップと心身の健康を保つために必須の投資。 |
| 合計総労働時間 | 40時間 | - | 直接お金をもらえる時間は全体の半分(50%)。 |
週40時間のうち、請求できるのは約20時間、つまり半分です。指導時間を週35〜40時間まで増やすと、準備や移動、事務作業が深夜や休日にずれ込み、指導クオリティも体力も落ちます。
価格を決める前に、次の5つを問いかけてみてください。
- 集中力を保って指導できるのは、週に最大何回までか?
- レッスン前後の準備とカルテ記入に、どれくらい必要か?
- 生徒さんや場所が変わるとき、移動にどれくらいかかるか?
- 日程調整や事務連絡に、週何時間取られるか?
- 急に週5コマ減っても、生活していける価格設定になっているか?
価格設定のゴールは、カレンダーを隙間なく埋めることではありません。健康的なペースで質の高い指導を続けられることです。
見落としがちな5つの「隠れコスト」
価格を決めるときに見落とされがちな、5つの直接・間接コストです。
- 場所代とプラットフォーム手数料
自身のアトリエ、時間貸しレンタルスペース、提携施設、オンラインでコストは大きく変わります。レンタル代が1回 300〜400 NT$ なら手取り計算から引き、マッチングサイト利用なら15%〜30%の手数料も入れます。
- 準備とアフターフォローの時間
個別指導は対面中だけで完結しません。メニュー作成、カルテ記録、食事指導や経過確認、質問対応もサービスの一部です。手厚くするなら、その労力を価格に反映させます。
- 移動時間と空きコマ
移動時間は次の仕事を受けられない空白のコストです。1回 1,800 NT$ でも片道45分なら、実質2.5時間以上を拘束されています。
- キャンセル・お休み・振替対応
直前のキャンセルや日程変更が入ると、その枠に他の生徒さんを入れられません。柔軟にお休みを認めるほど空きコマのコストを背負うので、「何時間前までなら振替可能か」「振替の有効期限」は先に決めます。
- 税金・ツール利用料・閑散期への備え
受け取った受講料は利益ではありません。所得税、顧客管理システムの月額費、道具の買い替え、閑散期に備え、毎月一定割合をプールします。
回数券(コース)はどう価格設定する?「約束する時間」から考える
回数券やコース販売は、継続とまとまった売上を早期に確保する定番手法です。ただし割引は単価の値引きではなく、未来の数か月分の時間と労力を前もって予約される行為です。プラン構成や回数、期限の設計手順は専用記事にまとめました:パーソナルトレーニングの回数券はどう設計する?
回数券の「1回あたりの手取り額」の計算式
総額を「実際に提供を約束した総回数」で割ります。
回数券の1回あたり手取り = 回数券の総額 ÷ 実際に提供する総回数(おまけ含む)
総額 12,000 NT$、購入8回、特典でプラス1回のプランなら、実際に提供する総回数は 9回 です。
12,000 NT$ ÷ 9回 = 1,333 NT$
「12,000 NT$ ÷ 8回 = 1,500 NT$」と勘違いしがちですが、おまけの1回にも60分の指導、場所代、準備、移動が発生します。無料の姿勢診断やチャット相談も、提供期間中のコストです。
回数券プランを販売する前に決めておくべき6つのルール
- 有効期限。例えば 8 回券は 10 週間以内。
- 割引プランで予約できる時間帯の制限。
- おまけ枠も通常枠と同じサービス内容と予約条件で提供するか。
- キャンセル時の振替回数と期限。
- 未消化分の返金または有効期限延長の精算ルール。
- 毎月の受け入れ上限人数。
割引は購入のきっかけになりますが、長く続ける基盤になるのは無理のない提供キャパシティです。
状況に合わせた4つの価格調整パターン
活動のステージによって、取り組むべき課題は異なります。
1. これから活動を始める方(新規スタート)
始めたばかりの頃は過去のデータがなく、準備や事務の時間を把握できません。24回や36回の回数券は避け、「単発体験」や「4〜6回の短期プラン」から始めて、準備とフォローの実時間、移動時間と場所代の比率、予約とキャンセルの頻度、想定以上に時間を取られているサービスを集めましょう。
長期の低価格契約で縛るより、修正できる余白を残すほうが安全です。
2. 生徒数が安定してきた方(ステップアップ)
予約枠が埋まるようになったら、過去数か月の運用データを見直します。毎月完了したレッスン数、コース終了後の継続率、生徒1人あたりにかけている時間の適切さです。
スタート当初の控えめな価格を据え置く必要はありません。指導力が高まり成果を早く出せるようになったなら、自信を持って価格改定を検討しましょう。
3. 固定のスタジオ家賃やプラットフォーム手数料がある方
専用拠点や集客プラットフォームを使う場合は、固定費と1回ごとの変動費を分けて管理します。毎月何回で家賃の損益分岐点を超えるか、1回増やすごとに場所代や消耗品代がいくら増えるか、手数料を引いた後でも手取り底値を上回っているかを確認します。
4. 値上げを検討している方
この段階で迷うのは伝え方です。具体的な伝え方は後半の値上げを生徒さんに角を立てずに伝えるには?にまとめました。ここでは1点だけ、適用開始日を決める前に、新料金で何が向上するのかを先に固めてください。
「サービスの質を高めるための前向きな改定」と伝われば、信頼を損なわずに移行できます。
定期的に見直したい「3つの数字」
3か月から半年に1回、次の3つで事業の健康診断をしましょう。
- 表向きの提示価格
現在の市場や自身のポジションに合っているか。
- 1回あたりの平均手取り額
特典や手数料を引いた後、実質いくら残っているか。
- 本当の時給(実質時給)
裏方時間も含めたとき、納得のいく時給になっているか。
あわせて運用データも確認します。毎月販売した総回数、実際に消化したレッスン数、キャンセルや振替の頻度、未消化で残っている回数券の総数です。
提示価格は十分なのに手取りが少ないなら、特典のつけすぎか値引きのしすぎです。手取りは良くても実質時給が低いなら、準備や移動、連絡対応に時間を取られすぎています。埋まっているのに消化回数が少ないなら、キャンセル・振替ルールを見直すサインです。残り回数の把握は、将来のスケジュール調整や売上予測にもつながります。
値上げを生徒さんに角を立てずに伝えるには?
料金改定を伝えるときは、プレッシャーを与えない誠実な伝え方を意識します。押さえるのは次の4点です。
- 十分な猶予を持った事前予告
1〜2か月前には告知する。
- 新プランの具体的な内容
新料金、回数、期限、サポート内容を明確にする。
- 指導・サービスの向上内容
これまでの成果と、今後提供できる価値の向上を伝える。
- 既存生徒への配慮
現在のチケットはそのまま使えること、期間限定で旧価格での再購入枠を用意することを明記する。
そのまま使える案内文テンプレート:
「受講生の皆様へ:いつもレッスンにご参加いただきありがとうございます。より充実した個別指導をお届けするため、〇月〇日よりレッスンプランを一部改定させていただきます。新プランではレッスンカルテの管理システムを導入し、ご自宅でのセルフケア支援を強化いたします。現在お持ちの回数券は期限までそのままご利用いただけます。また〇月〇日までは既存の受講生様限定で、現在の価格にて1回分の継続お申し込みを承ります。ご不明な点がございましたら、いつでもご相談ください。」
この案内なら、無理に売り込まず生徒さんに選択肢を委ねられ、指導への誇りも伝わります。
よくある質問(FAQ)
レッスン1回の相場はいくらくらいが妥当ですか?
料金は「時給制」と「回数制(コマ制)」のどちらが良いですか?
回数券におまけの無料レッスンをつけるべきですか?
値上げを生徒さんにどう切り出せばいいですか?
自分のレッスン料金が安すぎないか確認するには?
まとめ:長く続けられる計算をしてから、価格を決めよう
相場を参考にするのは大切ですが、周りの数字だけに流されてはいけません。生活費、働き方、教える環境、使える時間は人それぞれです。他人の料金を真似しても、忙しさのあまり指導への情熱をすり減らすだけです。
長く続けられる価格設定は、自分のリアルな生活から始まります。毎月いくら必要かを把握し、健康を保ちながら教えられる回数を見極め、場所代、手数料、準備時間、移動時間、急なキャンセルへの備えを数字に落とし込みます。
こうして逆算した「手取り底値」は、単なる計算結果ではありません。プロとして誇りを持って指導を続けていくためのお守りになります。
レッスンの価格は、相場のリサーチから始めてもかまいません。しかし最後は、自分自身のコスト、時間、キャパシティに合わせて決めることが大切です。


